「ペルー天野博物館」が中心となり、ペルー海岸地域のチャンカイ谷で発見された紀元前3000年紀の「ラス・シクラス遺跡」の考古学的発掘調査を、文化人類学・耐震工学・地理学・遺伝学・生物学などの分野にわたる総合的な学術研究調査として進めていくプロジェクトです。

チャンカイ谷のラス・シクラス遺跡  ペルーの首都リマから北に100km離れたチャンカイ川河谷は、これまで天野博物館が独自に調査研究を続けてきたチャンカイ文化(1000-1400年)でよく知られています。そのチャンカイ谷の一角に、紀元前3000年紀までさかのぼる遺跡があることが、2005年の緊急調査により判明しました。これまではピスキージョと呼ばれてきた小規模な遺跡で、新たに「ラス・シクラス遺跡」と名づけられ、ペルー文化庁の調査許可を得て、発掘を開始することになりました。

ラス・シクラス遺跡,発掘風景
 「発見」のきっかけは2005年8月、盗掘者によって掘られた8mの垂直穴を天野博物館と筑波技術大学が共同調査したことによります。調査の結果、「シクラ」と呼ばれる植物繊維のネットが出土しました。シクラはアシなどの植物で作られた袋状のネットで、石を詰めて築造補強材として使用されます。補強土構工法として、構造・耐震性に優れていることが知られています。
 2006年3月にペルーの考古学者とともに、盗掘穴周辺の正式な遺跡調査を行ないました。その結果、シクラ片や布片などの遺物が出土し、石積みの壁に漆喰を塗った壁面やニッチ(飾り棚/壁のくぼみ)が確認されました。床面や壁面の配置から、7〜8回にわたり同じ場所に重ねて建て替えられた跡も確認できました。シクラ片と木炭のサンプルを6点採取し、日本で放射性炭素測定を行なった結果、紀元前3000年近くまでさかのぼることが判明しました。
 「ラス・シクラス遺跡」は、チャンカイ河谷の北150kmにあるスペ河谷のカラル遺跡と同時期の遺跡と考えられます。巨大な建造物(ピラミッド)が集中しているカラル遺跡は、アンデス形成期(神殿などが建てられ始めた時期)の遺跡を1000年以上もさかのぼり、アンデス古代文明の成立に関するこれまでの常識を書き替える存在として注目を集め、発掘調査が進められている遺跡です。ふたつの遺跡の関連性も、今後の調査の重要な課題となるでしょう。
 「チャンカイ河谷総合調査」事業では、紀元前3000年紀の「ラス・シクラス遺跡」の考古学的発掘調査を中心に、文化人類学・耐震工学・地理学・地震学・生物学・遺伝学などを含めた学際的総合調査を行ないます。とくに地震災害との関連性に視点を置き、自然災害と都市発展の関連性やシクラを使った補強土構工法の耐震効果などを明らかにしていく計画です。